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2010年5月1日
(時々コラム)過酷さ乗り越え達成感! 大崩山登山に初挑戦
大崩山山開き登山会の参加者。袖ダキにて。後方に見えるのが下湧塚

大崩山山開き登山会の参加者。袖ダキにて。後方に見えるのが下湧塚

 

 朝、起きあがろうとした瞬間、両太股、二の腕に激痛が走った。特に太股は前日、肉離れ寸前のような激しいけいれんを起こし、一時は歩くことさえできなかった部位だけに、痛みをこらえゆっくりと立ち上がってみた。うん、大丈夫だ! この痛みが、前日に味わった至福の達成感に対する代償だとしたら、甘んじて受け入れるしかない。素直にそう思える自分がいた。それだけ、一生忘れられないような感動が味わえる山、それが大崩山だった。

 

     ▽                    ▽

 

 4月29日、延岡市北川町の大崩山(1644メートル)で行われた山開き登山会に参加した。九州、西日本、いや日本を代表する名山が地元にありながら、登ったことはない。機会に恵まれなかった訳ではなく、むしろ避けていた。人づてに、上級者向けの厳しい山だと聞いていたからだ。

午前8時過ぎに登山開始

午前8時過ぎに登山開始

 

 いつまでも若いつもりではいても、今月で51歳。年齢は隠せない。中学から大学までソフトテニスで鍛えたはずの体は、長年の怠慢がたたりプヨプヨ。なまりになまっている。かつて暇があれば登っていた行縢山ですら、滝の下まで行くのがせいぜい。もう何十年も頂上に立ったことがない。そんな人間が大崩山に登るなんて、夢のまた夢の話だった。

 

 それなのに、あえて登ってみようと思ったのには訳がある。

 

 
 延岡にある本物の海、山、川を生かし、延岡をアウトドア天国として売り出そうという「のべおか感動体験案内人」プロジェクトに参画するようになり、鹿川や祝子川に行く機会が格段に増えた。 

 

大崩山にははしごやロープが架かった場所が何カ所もある

大崩山にははしごやロープが架かった場所が何カ所もある

 
 大崩山はもとより、ロッククライミングの聖地・比叡山、鹿川渓谷を取り巻く鉾岳、だき山など、素晴らしい山々の存在を知るにつけ、写真や遠くからしか眺めることしかなかった景観に、もっと間近かで触れたい。そして、そこに至る感動体験を、経験した人しか語れない本当の言葉でアピールしたい。そう強く思うようになった。その手始めが今回の大崩山登山だった。

ロープを頼りにカニ歩きで岩肌を歩く

ロープを頼りにカニ歩きで岩肌を歩く

 

 

 

 

 

 

 
 特に今年は、地元・祝子川自治公民館や延岡観光協会、市商業観光課の尽力で、毎年4月29日に行う山開きの日に、神事、釣り大会などの恒例行事だけでなく、登山会が同時に開かれることが決まった。参加費は保険料、昼食代、ガイド料込みでたったの2000円。ガイド1人お願いするのに、最低でも1日1万5000円という世界なことを考えると、「こんな機会を逃す手はない」と思い、一念発起して参加を決めた。

 
 登山1カ月前、祝子川温泉・美人の湯の伊藤辰也支配人から「毎日スクワットを30回ぐらいやっとくといいよ」というアドバイスをもらい、可能な限り実践してきたつもりだった。

途中の谷川から見た小積ダキ(左)と袖ダキ(右)

途中の谷川から見た小積ダキ(左)と袖ダキ(右)

 

 

           ▽             ▽   

 
 周りの人たちからは「やめた方がいいよ」「無謀な挑戦」などという冷ややかな声の反面、「十分登れますよ。大丈夫です」「きつい思いはするけど、登った時の感動はまた格別だよ」など好意的な意見もいただき、不安と期待が交差する中、当日を迎えた。

 
 早朝の風はまだ冷たいものの、雲一つ無い絶好の登山日和に恵まれた。スクワットの成果への期待、生来の楽観的思考に加え、同行の女性2人は山登りのベテランとフルマラソンの経験者。体力的には、自分が一番頼りないぐらいだったが、不思議と不安は消え失せていた。「無理をせず、ゆっくり登ればきっと大丈夫」。

 

小積ダキ

小積ダキ

 
 今回の参加者は11人。市内を中心に遠くは佐土原からの参加者もいた。自分を含め初めて登る人も多いようだ。70歳の男性もおり、自分が若い方から数えた方が早いことに、根拠のない自信を深めた。ガイドが延岡山の会会長の梶原光夫さんら5人もいて、2-3人に1人のガイドが付くぜいたくな布陣。頼もしい限りだ。

 

 
 午前7時半過ぎ、集合場所の美人の湯駐車場で登山に際しての注意を受けた後、マイクロバスに乗り込み登山口へ。登山口近くの道路には、かなりの台数の車が止まっている。県外ナンバーがやけに目立つ。

 
 午前8時5分、ストレッチで体をほぐし、いざ登山開始。ガイドさんの教え通り、大きく深呼吸しながらゆっくりと歩を進める。いきなりの急な登りも苦しくない。よしよし、順調、順調。途中、ロープを使ったり、はしごを登ったりする場所もあったが、30分ほどで最初の休憩地点である大崩山荘にたどりついた。

 
 「楽勝、楽勝」と思っていると、ガイドさんから「まだまだ今まではハイキング。特に後半からの登りが本当の山登り」という不吉な言葉。でも、その言葉が持つ重みを実感したのは後のこと。

 

谷川に架かったアルミ橋を渡る参加者。アドベンチャー要素たっぷりだ

谷川に架かったアルミ橋を渡る参加者。アドベンチャー要素たっぷりだ

 さらに30分ほどで、巨石ばかりの大きな谷川に出た。谷川から小積ダキや目指すソデダキが一望できる。前もってルートを確保しておいてくれたガイドさんたちの手を借り、大きな岩をいくつも乗り越え、幅50センチほどのアルミ橋をわたり、ロープを使って谷川を渡りきる。アドベンチャー要素満載で楽しくなってきた。

 

 
 さらに、小積谷と呼ばれる小川沿いの登山道を登り続けること30分ほどで、この日一番のクライマックスがやってきた。

 

 
 「最後の水場」と呼ばれる地点で休憩をとり、最後の難関に挑む。ここから目的地の袖ダキまでは、標高差300メートルほどの斜面を一気に登る感じとなり、ガイドさんいわく「これからが本当の登山」。

 

 
 歩き始めて既に2時間近くが経過している。気力はまだ十分だが、足に少し疲労が来ている。ここまで来たらもう引き返せない。そう、登るっきゃない。

 

登山者を出迎えた満開のアケボノツツジ

登山者を出迎えた満開のアケボノツツジ

 
 ここからの道は、これまでの勾配とは全く違い、急な崖をはい上がる感じ。はしごとロープで大きな岩をよじ登ったり、木の根をつかみはいつくばるように登るような場所ばかりが続く。危険な場所には、ガイドさんが先回りしてザイルをかけてくれており、心強かった。

 

 
 呼吸がしだいに荒くなり、足が重くなっていくのが分かる。ガイドさんの「もう少しだ。あと●●メートル」との声に、「ほんまかいな。さっきからもう少し、もう少しって言ってない?」などと思わず愚痴。満開のアケボノツツジが、萎えかける気力にわずかながら活力を与えてくれた。

 
 疲れがピークに達し、もう無理かなと思った時、最後のロープ場にたどりついた。高さ30メートルはありそうな岩肌を2本のロープだけを頼りに登る正真正銘最後の難関。両腕の疲労もピークに近く、写真を撮る余裕は全くない。ガイドさんから「ここを登り切ればもう袖ダキだ」との言葉を信じ、両腕に最後の力を込め、必死の思いで一気に駆け上る。

 

袖ダキ

袖ダキ


 ガイドさんの言葉は本当だった。ロープ場を登り切ると、ほんの数メートルで袖ダキに到着だ。いきなりヤブが終わり、空が急に近くなった。目の前に表れた大きな岩をはい上がると、そこには信じられないような絶景が待っていた。

袖ダキから下湧塚を望む

袖ダキから下湧塚を望む

坊主岩

坊主岩

 まず正面に飛び込んできたのが、小積ダキの巨大な岩峰。右手にはポスターなどで見かける下湧塚の勇姿がそびえたつ。恐る恐る岩の端から顔を出すと、吸い込まれそうなくらい深くて大きな谷。なんというスケール。なんと神々しい光景か。

 

数百メートルの断崖がそびえる下湧塚

数百メートルの断崖がそびえる下湧塚

 ここまで約3時間にわたる過酷な道のりを乗り越えたからこそ、味わうことができる感動に浸りきる。苦難の先には、最高のご褒美が待っていたのだ。

 

 
 ひとしきり周辺の写真を撮った後、麓で渡された煮しめ入りおにぎり弁当をいただく。この煮しめのおいしさは、参加者だけにしかきっと分からないだろう。

 

 
 袖ダキでの滞在時間は30分。でも、その30分は生涯忘れることができない30分になった。

 
                             ▽                    ▽

 

 参加者全員で記念写真を撮り、下山。

 
 ところが、下山開始寸前でトラブルが発生した。その原因は自分自身。下山を始めようと岩の斜面で待機していると、いきなり両足の太股がけいれんし始めた。今まで何ともなかったのに何故?

 
 ガイドさんに付いて歩き始めると、もういけない。太股とふくらはぎの筋肉が同時につりそうになり、前に歩を進めることはおろか、座ることもできない。以前、少年野球を教えているときに経験した肉離れに近い状態。これでは、いきなりあのロープをつたって下りるなんて、とても無理だ。

 

 
 ガイドの梶原さんが持参していた筋肉痛用の塗り薬をもらい、両足全体に塗るが、痛みは収まらない。だが、そのままそこにいる訳にもいかず、「ゆっくり、マイペースで下山しよう」という参加者の皆さんの温かい言葉に励まされ、意を決し激痛をこらえ、なんとか歩を進めてみることにした。

袖ダキで見たアケボノツツジはまだつぼみが多かった

袖ダキで見たアケボノツツジはまだつぼみが多かった

 
 するとどうだ。10歩ほど歩いたところで、今までの激痛が嘘のように消えてしまった。梶原さんいわく「医者にもらった非売品なのよ。休む時間が長くなると体が冷え君のようなことが起こることがあるので、持ってきて良かったわ」とのこと。もう感謝、感謝。何より他の参加者の方々に迷惑をかけずにすんだことに、胸をなでおろした。梶原さんは笑いながら「あのまま歩けなくなったら、おぶるか、臨時の担架を作って運ぶしかないと覚悟したよ」と言っていたが、あの急斜面を担架で下りるなんて想像もできなかった。

 

 その後は、両太股に少し痛みが残ってはいたものの、何とかペースを崩さず快適に下山することができた。登りと違って息も切れず、袖ダキでのお騒がせが嘘のようだった。

 
    ▽          ▽

 
 今回挑戦した袖ダキまでのコースは、中級者向けとか。谷川を渡ったり、あちこちではしごやロープを登ったりと、変化に富んだコースで面白かった。袖ダキの標高は1200メートルちょっとで、山頂まではさらに1時間半の道のりが必要という。

 
 帰りは、美人の湯で疲れと、顔中に吹いていた塩分を取り除き帰路についた。

 

 絶好の登山日和に恵まれ、ガイドの梶原さんは「満開のアケボノツツジを見せることができ、ガイド冥利に尽きる」と感想。一緒に登った延岡市役所商業観光課の本庄俊博主幹は「初めての大崩山登山で、果たして無事に上って、下りてくることができるだろうかと不安な気持ちで一杯でしたが、ガイドの方の先導と登山客の皆さんと一緒だったので、楽しく登山ができました。袖ダキでの絶景を見ながらの昼食は最高でした。翌朝は、やっとの思いで起きましたが、達成感と充実感を味わえた1日でした」とのコメントを寄せてくれた。

 
 ハッキリ言って、甘くなかった大崩山登山。でも、あの感動と達成感は、登った人にしか味わえない。ブヨブヨの私ですらなんとか登れたのですから、きっとあなたも……。(K1)





2件のコメントがあります。

  1. 2010-05-1 : 008

    お疲れ様でした。疲労困憊、翌日の筋肉痛に、夢ではなかったと実感しました。破格値ツアー、ただし経験者限定、ってところですね。

  2. 2011-05-11 : ばぶちゃん

    お疲れ様でした。
    私も今月おおくえ山に、登る予定をしてます。
    大変な山ですね。心して登りたいと思います。


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