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2010年1月28日
「新延岡百景」~小嶋政一郎氏をしのぶ~(92)方財島②

houzai011 小嶋さんの執筆活動は、晩年まで衰えを知らなかった。遺作となったのは昭和51年(1976)5月に発行された「延岡百景 今と昔」だが、その前年には「方財島」(改訂版)を出版している。 方財島という非常に限られた地域の歴史・民俗・教育のことを、地元出身でもない人が、1冊の本にまとめあげるというのは、珍しいのではなかろうか。小嶋さんが、いかに方財島に愛着を持っておられたか察することができる。そこで、著書「方財島」の中から「低学年の護岸工事」の記述を紹介したい。

 

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 ある日、「県庁のものです」という方が、突然、学校に見えた。「西側の渡船場附近の護岸工事が、だいぶんいたんでいるということで、それを見に来たのです」と。

 

 渡船場では、自分もしょっ中、船に乗ったり船からおりたりしているのに、そのあたりの護岸工事がいたんでいることには全然、気がついていなかった。その人について行って見た。なるほどいたんでいる。護岸工事の方法は、いろいろあるだろうが、ここのは太い針金の目のあらい網で、その下にならべられた丸い川石が包まれた格好になっている。川の水かさがふえたり、へったりするし、風が吹いたり、発着する船がおこすおら波が、ざぶざぶ打ち寄せたりする度びに、丸い石の下の砂土が外に流れ出ると見えて、せっかく並べた川石の面が凸凹になり、川石の面と針金の網の面とが十㌢も二十㌢も、すいている。

 

小嶋政一郎さんが校長をしていた方財小

小嶋政一郎さんが校長をしていた方財小

 「この護岸工事の仕事を、私の学校の子供たちにやらせてもらえませんか」と私はいった。県庁の人が「小学校の子供にできましょうか」といった。

 

 私は、子供でやれる自信があった。

 

 労作教育は、仕事の経費を無視するのではないが、たとえば工法がまずくて、二度や三度はやり直しても、それが教育というもので、工事人が行う仕事とは、意味が違うのである。県庁の人が「それではお願いしましょう」といってくれた。

 

 翌日から一年生と二年生とが作業にかかった。受持の先生がセメントを練った。砂やバラスは幾らでもある方財である。練ったセメントをお団子にして、そのお団子を、金網の目から、丸石の目に押しこむのである。子供の細い手が器用に働いて、先生はお団子つくりにいそがしい。

 

 子供が近くから竹の棒を拾って来た。セメントを川石の下の隙間に押しこむのに、竹の棒がいるということを、子供が発見したのである。労作教育には、常に発見がともなう。先生が教えるのではなく、先生が智識をつめこむのではなく、子供自身が、労作することで、材料・方法を発見するのである。労作教育が子供を伸ばし、目ざめさせ、発見の喜びを与えるのである。

 

 川石の下側の、手の届かぬ隙間にセメントを詰めこむ子供の労作には、大人の工事人が使うセメントの量の倍ほども使うであろうが、その代り、大人の工事人の仕事よりも、じょうぶな護岸ができ上るということも、ありがたいことなのだ。

 

 十日か二週間後、ふたたび方財を訪れた県庁の方が、感心してくれた。喜んでくれた。若干のお金もおいて行って下さった。

 

 子供には「これは県庁のおじさんからのお礼ですよ」といって、ノートや鉛筆が配られた。子供には「賃金」でない、「お礼」が配られたのだ。

(原文のまま)

 

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方財小の校門を入ったところにある小嶋政一郎さん作の「コスモスの歌」の碑

方財小の校門を入ったところにある小嶋政一郎さん作の「コスモスの歌」の碑

 上記の内容は小嶋かず枝(小嶋さんの長男・宏氏夫人)が編さんした「楽浪園の三羽烏と延岡」にも紹介されている。 

 

 小嶋さんが方財小の校長を務めたのは、昭和8年(1933)~13年(1938)。「方財島」の初版本は、校長時代の昭和12年(1937)に発行されている。小嶋さんは方財小を去ったあとも方財にたびたび足を運び、歴史・民俗などの調査・研究を続けた。その結果、昭和51年発行の改訂版は、初版本の内容の3倍程度あり、かなり充実したものになっている。

 

 小嶋さんは、「遠い水上 高千穂の」で始まる方財小校歌を作詞している。作曲は延岡西高教諭を最後に退職した海老原吉之氏(故人)。また「方財地蔵さま」(地蔵おどり)、「方財音頭」、「方財おどり」の作詞もしている。このほか方財小には「コスモスの詩」碑が建っている。小嶋さんがいかに方財の人たちと交流があったかを示すものである。

(この項つづく)
 





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