生椎茸の南蛮漬けにサドがらの油炒め、地こんにゃくの白あえ、ハスガラと鮎入りなます、ヤーコンの味噌炒め……。“これぞ究極のスローフード”的な料理の数々に、懐かしさや温もりを感じたのは私だけだろうか。
11月1日、日向市東郷町の東臼杵南部農業改良普及センターで開かれた「食の祭典」で、地元の農産加工グループらが作った「東郷お膳」を味わった。
東郷町商工会(寺原忠男会長)が、中小企業庁の「地域資源∞全国展開プロジェクト」の採択を受けて取り組む食の開発事業の一環。漂泊の歌人・若山牧水が生まれた山紫水明の地という“ブランド”を生かし、新たな郷土料理や特産品開発を目指そうという試みだ。
この日は、1食1000円の100食限定でモニターを募集。実際に味わった人たちの感想を基に、人気の高い料理を盛り込んだ東郷ならではの名物お膳を作るのだという。
食後のアンケートでは正直、バリエーションが多すぎてお薦めの1品を選ぶのに苦労した。そのラインナップを紹介すると、こうだ。
ごはん物が、牧水もこよなく愛したという東郷版ちらし寿司の「まぜくり」、昔から野菜の少ない冬場に保存し食べていたという木の若葉で作った「くさぎ菜飯」、古代米を入れて炊きあげ赤飯に似たもちもち感を出した「黒米ご飯」の3種類。
汁物が、地鶏とゴボウ、椎茸のだしを効かせた手打ちそば入りの「そば汁」、味噌汁にそば粉を入れドロドロ感を出した野菜たっぷりの「どろ汁」の2種類。
季節の野菜料理が、猪肉を使った「猪の田舎煮」、地醤油を使った定番の「煮しめ」、オリゴ糖やポリフェノールの宝庫と言われサツマイモに似た健康野菜・ヤーコンを使った「ヤーコンの味噌炒め」、サド(イタドリ)を使った「サドがらの油炒め」、山芋の肉芽・ムカゴが入った「ムカゴいりがんずあげ」、地元のこんにゃく芋と大豆で作った「地こんにゃくの白あえ」、坪谷川で捕れた鮎が入った「ハスガラと鮎入りなます」、肉厚の生しいたけを使った「生椎茸の南蛮漬け」、竹の子の歯ごたえがたまらない「竹の子きんぴら」の9種類。
スイーツが、地取れ落花生を使った「落花生のくず餅」、干し芋を蒸してつきたて餅と砂糖を加えた「牧水だんご(かんころもち)」、地元柿園で育った「柿」の3種類。
さらには、漬け物も「朝鮮漬け」「きゅうりとナスの変わり漬け」「青菜の漬け物」「味噌漬け」と4種類あり、実に21種類もの料理が並んだ。
一般的に1日に30種類以上の食材を食べるといいと言われるが、これらの料理に使われている食材を数えると、少なく見積もっても50種類以上はあるだろう。素朴さをギュッと詰め込み、しかもヘルシーこの上ないお膳なのである。
田舎生まれの私にとっても懐かしい食材ばかり。サドは、ツバナ(ちがやの花)と並ぶ道端で調達できる貴重のおやつだったし、ムシロの上に干してある干し芋をちょくちょく失敬しながら遊び回った当時を思い出した。煮しめはまさにお袋の味そのもの。里山の暮らしをギューと凝縮したようなお膳に、昔ながらの豊かさ、温もりが残る東郷の底力を感じた次第だ。
今回の全国展開プロジェクトでは、「曲げわっぱ蒸し」「クロボーマン」「うなぎ高菜漬け」「山の幸おやき」などの特産品開発も行われている。“なりきり牧水”や牧水ウォーク、耳川でのカヌー体験などのイベントも活発化してきた。東郷の新しい挑戦に、しばらく目が離せそうにない。



















